【ミニ漫談】水

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昨日の夜のことなんですけどね。
のどが乾いて目が覚めたんです。

「水でも飲もうかなー」とキッチンに行きまして、コップを持って
ふつーに蛇口ひねりますよね。
何が出てきたと思います?

水じゃないんすよ。
声です。声。
「なんでやねん!」て。
蛇口からツッコミが聞こえたんです。

もう、一瞬で目が覚めましたよ。
いや、ていうか、こっちのセリフですよね。
蛇口ひねって水も出ずに「なんでやねん」て言われるんですよ?

おっかしいなあ、寝ぼけてるのかなあと思って
もっかい蛇口ひねったんです。
そしたらまた「なんでやねん!」て。

いやいやいや……。
ちょっと待って、ちょっと待って……。
なんかもう、アホらしくなってきますよ。

呆れとか腹立たしさを超えて、むしろ朗らかな気持ち。
「そうきたか」ていう。

そこでちょっと思いついたんです。
ちょっと遊んでやろうかなっていう、変ないたずら心が湧いてきました。
DJていうんですかね?
僕、クラブとか行かないんでよくわからないですけど、あるじゃないですか。
「きゅ!きゅきゅっきゅ!きゅっきゅ!きゅきゅきゅ!」みたいな。
それと同じ要領で
「なんでや!……な!なな!なんで!なんでや!なんでやねん!!」
ていうね。
ひねる!閉じる!
「なな!な!な!なんでやねん!!」
の繰り返し。

なんか楽しくなって、しばらく調子乗って遊んでたら、いきなりですよ。

「どないやねん!」
に変わったんです。

へ?……つって。
よく見たら、気付いかないうちに
レバーを「お湯」の方にしてたんですね。

なるほど。水が「なんでやねん」でお湯が「どないやねん」かと。
その理解は一瞬でしたわ。

ほら、DJてよく考えたら左手でなんかツマミをいじって
右手でレコードをきゅっきゅやってるイメージあるじゃないですか。
「ど、どど!どないや!な!ななな!……なんでやねん!!」
みたいに、遊びの幅が広がってテンション爆アゲですわ。

ここで冷静になっておけば良かったんですけどねー。
ふと、もう1つ気になることを見つけてしまったんです。

うちは、あの、浄水器っていうんですかね。
蛇口の先になんかこう、カートリッジみたいなので
「ろ過」するものが付いてるんですよ。

 

f:id:asitayuuki:20171018194544j:plain

(イメージ)

 

で、それに水滴マークとシャワーマークがあって
水のタイプをカチャッカチャッて切り替えられるんです。

で、よく見たらそのマークが水滴とシャワーじゃなくて
こう、手のひらとハリセンになってて。
「お、これはまさか……!」と思うじゃないですか。

「うーん、どっちかっていったら……ハリセンかなあ!」
なんて妙にハイな気分になっちゃって。
いや、こっちはもうさっきのDJプレイで
テンション爆アゲになっちゃってますから。

それで迷わずハリセンモードにしたわけですよ。
「えっと、じゃあ、フレーズはどっちにしようかなー」みたいな。
ハンバーグとカレーどっちにしよう、みたいなピュアな葛藤ですよね。

ここはやっぱり正統派の「なんでやねん!」に決めたんです。
「わー!大阪弁で、ハリセンで、なんでやねん!て突っ込まれることなんて
人生でそうあることじゃないでしょ!」なんて。
もうドキドキワクワクのピーク。
エクスタシーの寸前。

ひねりました。ひねりました。
たしかに、ひねりました。

ひねった瞬間、何が出てきたと思います?

普通に水が出てきたんですよ。

思わず叫びましたね。僕が。


なんでやねん!!!

 

END

【ミニ漫談】サーカス

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僕、実は小学生の頃、サーカス団にいたんですよ。
道歩いてたら、あやしいおじさんに
「きみ、サーカスやってみない?」て
スカウトされて。

「は?」てなるじゃないですか。
でも、小学生の男子なんてたいていアホですから。
なんかおもしろそうだなー、てついて行ったんですよ。

で、スカウトされたはいいけども、実際にはまったくセンスなくて。
玉乗りもジャグリングも全然ヘタクソ。
運動神経悪いし、高所恐怖症だし、トークもグダグダでまるで見込みなし。

でも、唯一褒められた芸があるんですよ。
ていうか大絶賛。

団長が言うには、「今その芸をやらせたら、日本で一番うまいかもしれない」と。
まあ、さすがにそれはお世辞だと思うんですけどね。

「なぜ、今の君に、その芸が、そんなにうまくできるか、まったくわからない」
とかも言われました。

まあ、自分で言うのもナンなんですけど、神業レベルと言ってもいいと思います。


ということで、その芸を今からやりますね。

 

…………。

 

はい!

 

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END

【コント】公園

http://free-photos-ls03.gatag.net/images/lgf01a201405221200.jpg

 

   A、公園に到着。
   スマホで時間と場所を確かめる。
   B、到着。

B:おいっすー。
A:うぃす。
B:時間通りに来るなんて珍しいじゃん。
A:そんなことねえよ。
B:じゃあ、入ろうぜ。
A:え?
B:ん?
A:集合場所ここじゃないの?
B:ここだよ。
A:だよな。じゃどっか行こうぜ。
B:え?
A:ん?
B:いや、ここ公園じゃん。
A:公園だよ。
B:は?
A:え?
B:いや、だから行こうよ。
A:マジ?
B:マジ。いや、え、なに?
A:うそ!?
B:なんで、ここで立ち話すんの?
A:ちがうちがう、え、公園行くの?
B:そうだよ、行こうよ。ベンチ。
A:ええ……。
B:まあ、座れよ。
A:ひさしぶりに来たわ、公園なんて。
B:そうか。結構いいもんなのに。おい。見ろよ、あれ。
A:どれ?
B:看板。ボールで遊んじゃだめとか、今の子供は気の毒だよな。
A:まあなー。近所迷惑とかいろいろあんだろ。
B:それでゲームとかしてるんでしょ。
A:ああ。公園に集まってゲームして何が楽しいんだろ。家でやりゃいいのにな。
B:たしかに。あ、なんか飲む?
A:え、行かないの?
B:どこに?
A:いやほら、いろいろあるじゃん、行くとこなんて。
B:いいよ、ここで。
A:イヤだよ!なんでいい年したおっさん二人、公園のベンチでくつろがなきゃいけないんだよ。なにこのシチュエーション!
B:気にしすぎだって。
A:カフェ行こ、カフェ。駅前にドトールあったじゃん。
B:カフェ苦手なんだもん。メガネかけてないし。
A:カフェイ=メガネってどんなイメージだよ。じゃ適当な居酒屋でいいからさ。
B:俺もお前も飲めないだろ。
A:そうだけど、持たないって。画的にさあ。
B:だから気にしすぎだって。
A:カラオケは?
B:俺もお前も歌下手だもん。
A:うるせえな、余計なお世話だよ。じゃほら、あの……バッティングセンターは?
B:俺もお前も下手じゃん。
A:悪かったな!どうせ歌もスポーツもダメですよ!
B:まあまあ。いつかきっと良い出会いがあるよ。
A:雑なフォローいらねえから。え、じゃあここでずっとくっちゃべるの?
B:ずっとじゃねえよ。まあ、とりあえずコーラでいいっしょ?
A:居酒屋みたいに言うなって。え、きっつ!
B:金ないんだって。
A:せいぜい1000円ぐらいだろ。
B:きっつ!
A:小学生かよ!
B:いいじゃん、ちょろっと話すぐらいなら公園でさ。
A:公園で済むちょろっと話は、LINEでいいだろ!
B:わー、でた!これだから現代人は。
A:なんだよ!現代人は何なんだよ!
B:ひさしぶりに会って直接話したい人だっているだろ。
A:なんだよそれ。いや、やっぱきついって。
B:ビールだってあるし。
A:たしかに自販機にビール売ってるけどさあ。
B:賢く使えば公園だって遊べるんだよ。
A:ったくもう……。じゃ何すんだよ。
B:遊具いっぱいあんじゃん。
A:いい年こいたおっさんがジャングルジムとかブランコやんねえだろ!
B:いやいや楽しいって!年甲斐もなくジャングルジムとかブランコではしゃぐおっさんを動画で撮ってYoutubeにアップして会社に送り付けて。
A:大人の遊びをすんな!楽しいのお前だけだろ!
B:どっかの知らないおっさんがそれ観て「ンフっw」てなったらWin-Winじゃん。
A:しょうもないWin-Winいらねえわ。どっちかっつたら明らかにこっちが負け……つか撮るなって。
B:いや、別に撮ってないよ。
A:はあ?したら何してんの。
B:パズドラ。
A:公園でゲームをするな!家でやれ!
B:いや意外とおもしろいよ。外で出すコンボは強いわ。
A:"外で食べるごはんはおいしい"みたいに言うな。
B:なんだよ、さっきから。テンション下がることばっか言って。楽しくないの?
A:楽しくないって!ぜんぜん盛り上がんないじゃん。
B:はー、もうしょうがねえなあ。じゃどっか行く?
A:おう、行こう行こう。どっか良いとこ知ってんの?
B:ちょっと行ったところに2丁目公園っていうも少しでっかい……。
A:ハシゴしねえよ!

END

【コント】めっちゃリアル

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歩いて登場するA。路上で作品を売っているB。

 

B:ちょっとちょっと。
   A、スルーして行こうとする。
B:そこのお兄さん。
   A、気付くもスルーして行こうとする。
B:そこの滑舌に悩んでるお兄さん。
A:なんで喋ってないのにわかるんすか!
B:ほんとだったんですか!?
A:適当かよ!
B:ちょっとちょっとお兄さん、いいものありますよ。見ていきません?
A:は?
B:めっちゃリアルですよ。
A:……なにがですか?
B:これ(隠してる箱を指す)。
A:だから、なんですか?
B:見たいですか?
A:まあ、はい。
B:1700円になりまーす。
A:金取るんすか!?
B:そりゃそうですよ。ビコーズそれは芸術ですからー。
A:なんかムカつくなあ。いや1700円はちょっと……。
B:ほら、本とか映画とかもだいたいそれぐらいじゃないですか。
A:まあ、そりゃそうですけど。
B:1700円の本や映画で人生が変わるかもしれないように、1700円の芸術で人生が変わるかもしれないじゃないですか。
A:うわ。いいこと言ってるっぽいー、でもうさんくさいのもいなめないー……。
B:めっちゃリアルですよ。
A:そうなんですか。えー、どうしよっかなー。
B:1900円になりまーす。
A:なんであがるんですか!さっき1700円だったでしょ。
B:作品の価値は常に変わるんです。ビコーズそれは芸術ですからー。
A:それムカつきますね!
B:これはめっちゃリアルなんですよ。
A:意味わかんないですから。すいません、もういいですって。
B:めっちゃリアルなんですって!めっちゃリアルなんですって!!
A:ちょっと!じゃあもう、ええと……ヒントください。何系ですか?
B:そうそうそう“ガチョーン!”、“びろーん!”、“ムヒョーッ!”、“ハラホロヒレハレー!”てオイ、ちがうだろー!(下手なノリツッコミ)
A:いやいや、えっと、谷啓じゃなくて。
B:ちがうんですか!
A:なんですか、びろーんとか、ムヒョーとか……。
B:やめてください!恥ず!
A:いやもう、例えばその、動物系とか自然系とか。めっちゃリアルな何なのかってことですよ。
B:なんですかそれ。悪魔の実の話?
A:誰もワンピースの話してませんから。えっと、なんとなくわかりません?どんな感じかって。
B:えー。
A:ヒントくださいヒント。
B:しょうがないですねえ。1900円。
A:金取るの!?しかも本体より高い!
B:あ、そうですね。じゃあ2100円。
A:そっちの値段上げるのかよ……。
B:ビコーズそれは芸術……。
A:(言わせない)それやめてください。
B:いや、ですからもう、そのへんもぜーんぶ含めてこう……。
AB:めっちゃリアル!
A:もういいよ!
B:わかってきたじゃないですかー。
A:さすがに、得たいの知れないものに2000円は出せないですよ。あなた出せます?
B:バカ言わないでください、出せるわけないですよ。
A:でしょ!?
B:まあ、めっちゃリアルだったら出しますけどね。僕は。僕はね?
A:ああもう!
B:ていうか、さっきの人は5000円出しましたよ。
A:ええ、ほんとですか!?
B:その前は10,000円出した人もいましたし。
A:それ、ちょうど1700円がなかったから大きいお札出しただけでしょ。
B:ふひ!
A:ふひ!じゃないですよもう……。
B:めっちゃリアル!
A:何がですか!あ、そうだ。ちょっと待ってください。
B:どうかしました?
   A、スマホをいじる。
B:ATMならそこにありますよ。
A:この流れでお金引き出そうとしないでしょ。“上野 めっちゃリアル”と……。うわ、すごい!
B:めっちゃリアルですか?
A:いまツイッターで検索してみたんですけど、“めっちゃリアル”てつぶやいてる人いっぱいいる!
B:めっちゃリアルですからね。すごいですよ。
A:わー、なんかすごいウケてる。
B:めっちゃリアルですもん。ほんとに。
A:やべ、何か気になってきたなあ。何か話のネタになるかもしれないし。
B:ですよね。
A:はい!
   A、財布を出すもためらう。
B:じゃあ、もう特別サービスです。じゃんけんでお兄さんが買ったら、値下げしちゃいます。
A:ほんとですか!いくら?
B:うーん……1000円!
A:1000円かー!うーん、まあそのへんが落としどころかなー!
B:めっちゃリアルですよね。
A:はい!
B:逆に、300円とか言ったらなんかもううさんくさいじゃないですか。
A:たしかに。よし、1000円なら、うん。
B:行きますよー!
A:あ。でも、勝てなかったら悪いんですけど、2000円はキツいんで。
B:それはないですよ!甘い甘い!この世界は勝つか負けるかですから!ビコーズそれは勝負……。
A:(言わせない)えー、そうなるとなんかなあ。
B:じゃあ、1500円で手打っときます?
A:1500かあ。
B:1700円からの200円引きですよ。
A:うーん、なんかもうここまで来ると、1500円も2000円も変わらない気がしてきた。
B:よし、じゃあじゃんけんしましょ!
A:はい、じゃーんけーんぽん!
   Aが勝つ。
A:よっしゃ!
B:はーい、じゃあ1000円でーす。
   B、さっさとお金を受け取って箱のふたを開ける。
A:うわー、なんかずっと焦らされてきたから、すごい楽しみになってる俺がいる!いいんですか!期待しちゃいますよ!
   A、中から何かを取り出す。
   「リアル」と書かれたダサいオブジェが出てくる。
A:……めっちゃリアル!!

END

【コント】おやつ

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◯Aの家

   ゲームをしているAと、それを眺めているB。

A:なあ、いいかげん『桃鉄』飽きたな。
B:うん。だろうな。
A:いっつも40年あたりで飽きちゃうんだよ。
B:へー、そうなんだ。
A:うん。なんか人生みたいじゃない?
B:はあ?
A:やっぱ40歳頃に人生一回飽きて疲れちゃうんだよ。
B:そうかなあ。
A:そうだよ!
B:なんで怒ってんだよ。てかさ、なんで桃鉄一人でやるの?
A:え?
B:ふつーはみんなで……せめて二人でやらない?
A:それいま聞く?
B:そういう問題かな。
A:40年間何してたわけ?
B:そういうことじゃないだろ。
A:いや、だってさ。お前桃鉄やったことないんだろ?
B:やったことないけど、10年も見てればだいたいわかるよ。
A:10年じゃわかんないよ。人生と同じ。10才なんてまだまだガキ。
B:もういいからそれ。「一人で99年やるから見てて」っていうのはどう考えてもおかしいだろ。
A:イヤだよ。だってお前こういうの絶対ムキになるから、ケンカになっちゃうもん。
B:じゃあもういいよ。腹減ったわ。
A:あ、おやつ食う?
B:食うよ。めっちゃ食うよ。……40年分食うよ。
A:あはは。なんかお前そういうとこむかつくな。
B:お前が言うな。
A:まあまあ機嫌直せって。はい。
B:……なにこれ?
A:え、お前が買ったんじゃないの?
B:いや。買ってないよ。お前だろ?
A:知らないよ。初めて見た。
B:ウソだろ。なんだよこれ。
A:まさか、大人のオモチャ的な……?
B:どんな発想してんだよ、ただのポテチだろ。
A:ていうか、良くできたアートみたいだな。
B:うん。でも見たことないよ。何これ。文字何て書いてあるか読めないし。
A:外国のとかじゃないの。
B:なんかこえーよ。
A:開けてみよーぜ。
B:やめとけよ、なんか爆発とかするかもしんないだろ。
A:爆発って(笑)。発想がギャグマンガだな。
B:うるせえな、いやマジで気を付けろって……。
A:ウンダバー!
B:……大丈夫か。
A:うん。全然平気。食べてみよーぜ。
B:いや、さすがにやめとけって。
A:(臆さず食べる)うん。味は……ふっつー!むかつくー!
B:そこ怒るとこじゃないだろ。
A:なんかこう、期待しちゃうじゃん。
B:何をだよ。でもやっぱ不気味だって。怖いだろふつー。
A:大丈夫だって。お前も食ってみな。
B:いやいや、いいって。
A:うまいよ。うんうん。ふつーにうまい。
B:ウソつけよ。めっちゃ涙出てんじゃん。
A:あれ、ほんとだ。感動してんのかな。
B:そんな無自覚に感動しないだろ。
A:いやー、うまいおやつ食いながらゲームするってさ、最高のひまつぶしだよな。
B:まあ、そうだけどさ。お前ぐらいだろ。
A:なにが?
B:ニートでこんなぐうたらしてんの。
A:わかってるよ。今だけだって。
B:あれだろ、お前の妹さんはいま超忙しいんだろ。
A:知らねえよ。つかせっかく転職期間中の貴重な休みなんだからさ、そういう話はいいだろ。
B:まーまー、そうだけどさ。
A:そういや、この間言ってた桂子ちゃんとはどうなったんだよ。
B:別にどうもねえよ。1回軽くお茶しただけだし。ていうか俺、今年1年は恋愛しないって決めてるから。
A:そうなんだ。
B:そもそも桂子ちゃんはいわゆるバリキャリっていうの?しっかりしてるんだけど意識高い感じだから、付き合ったらちょっとしんどいかなあって。
A:へー。
B:住んでるとこも結構遠いから、デートするのも大変かなって。いやまあ、まだ付き合ってもないのにこんなこと考えるなんて、取らぬ狸の皮算用だよな。
A:ああ。“まだ産まれていない卵を気にかけるな”とも言うよね。
B:そうなの?
A:うん。
B:そうだ。それよりさ、こないだの合コンで知り合った子が美人じゃないけど、妙に気が合うんだよね。
A:へー、いいじゃん。
B:家も近所みたいだから、その子の方が脈あるかもしんない。
A:なるほど。“手の中の雀は、屋根の鳩よりも良い”って言うしね。
B:そ、そうなの?
A:うん。
B:いやまあ、そもそも失恋の怖さは身に沁みてるから、あんまり強気になれなくてさー。だからこの1年は恋愛しないって決めてるんだよね。
A:なるほど。“やけどした子供は火を避ける”って言うしね。
B:さっきから何なのそれ!
A:ことわざだよ。
B:聞いたことねえよ。それ食ってからなんかおかしいんじゃねえの。
A:関係ないだろ。
B:つーか、それ気になってしょうがねえわ。ちょっと見せて。
A:はい。
   B:、スマホで撮影。それをググる
B:見ろよ。画像検索でも引っかからない。
A:マジで?
B:ちょ、ツイッターに流してみるわ。このお菓子知ってる人います?と……。
A:あ、さすがにネットで探せばいるだろー。
B:そもそもなんて書いてあるのか……あ、そうだ!
A:どしたの。
B:レシート見せて。
A:レシート?
B:商品名書いてあるだろ。
A:あーあーあー、なるほど。
B:だろ!
A:捨てちゃったよ。
B:なんでだよ!!
A:そりゃいらないもの、レシート。
B:取っとくだろふつー!
A:いらないだろふつー!社会人かよ。
B:社会人だよ!
A:あそっか!でも“タダより高いものはない”ていうじゃん。だからタダでもらえるレシートより高いものは、この世に存在しないんだ。
B:意味わかんねーよもう、マジかよー!
A:そんなにヘコむなって。ディグンディグンー。
B:はあ?
A:ああ、めんごめんごー。
B:言い直してもむかつくわ。さっきから言葉おかしいぞ。
A:え、何してんの?
B:電話だよ。
A:ええ?
B:あ、もしもし。すみません、ちょっとお尋ねしたいんですが、レシートの再発行ってできますか……?
A:こいつマジで言ってんの……?
B:ああ、そうですか。ええと、じゃあ、その……レジの売上記録みたいなものを確認してもらうことって……?ああ、そうですか……。
A:あ、ちょっと変わって。俺がビシっと言ってやる(スマホを奪う)。
B:なんだよ!
A:もしもし、私、清水という者ですけど。はい。清らかな水と書いて清水。
B:そこ別に良くない?。
A:はい。はい。そうです。そうです。はい。おっしゃる通りです。
B:大丈夫かな……。
A:はい。では、よろしくお願いしますねー(スマホを返す)。
B:え、なに、OKもらったの!?
A:ふふん!
B:すげーな!(電話に)あ、すみませんホントお手数かけて。
   A:例のお菓子を食べる。
B:時間は2時頃で、一緒に買ったのは、えーと午後ティーと、カルピスと、あとじゃがりこと、プリンと……。
A:女子高生かよー!(大げさにガヤを入れる)
B:うるせえな。はい、そうですそうです。あ、すみません。……(Aに)ちょっと、メモちょうだい。
A:メモ?はい。
B:はい、すみません、お願いします。……はい。はい。え、ほんとですか!?(書き留める)
   A:、また食べる。
B:はい、わかりました。ごめんなさいご迷惑おかけして。ほんとありがとうございます。はい。はい。では失礼しまーす。
   A:、またスマホを奪う。
B:なんだよ!
A:清水です。はい。はい。すみません、ご協力ありがとうございました。はい。はいー。お手柔らかにー。
B:挨拶おかしいだろ。
A:なんだって?
B:レジの売上記録を見てもらったんだよ、そしたらレジの商品名も文字化けしてたんだって!
A:マジで?いよいよヤバい感じだな。
B:で、教えてもらったのがこれ(メモを見せる)。
A:はあ。
B:なんか最初の文字が、アルファベットのUの上にチョンチョンって。この時点でわけわかんねえよ。
A:ん、んんー?
B:あとはBとかrとかあるっぽいんだけど、ところどころ見たことない漢字とか記号が入ってるんだって。
A:これ、もしかしてウーウムラウトかも。
B:は?ウーウム……?
A:ウーウムラウト
B:なにそれ。
A:ドイツ語だよ。
B:意味わかんねえよ。なに、お前ドイツ語できんの?
A:まあ、ちょっとだけな。
B:初めて聞いたわ!すげえじゃん!
A:大したことねえって。
B:え、じゃあなんとなくわかんじゃねえの?
A:あー、そしたらひょっとして、これかな……(スペルを書く)。
B:う、う、うべらしぇんど……?(überraschend)
A:そう。“意外”って意味のドイツ語。
B:そうなんだ、え、全然意味わかんないけど。
A:俺だって知らねえよ。
B:だよな……。あ、じゃあこのメーカーは?
A:アンファグ(Unfug)……ああー。
B:なんて意味?
A:正直、わかんないっすね。
B:なんでだよ!
A:だからちょっとだけって言ったじゃん(逆ギレ)!
B:ごめんごめん。いや、でもすげーヒントだわ。これで検索してみようぜ。
A:おお、やってやって。
   B:スマホで検索する。
B:ダメだ。何にもヒットしない。
A:メーカーでも?
B:うん。
A:……はあ?
B:ちょっと待って。なんかすげえ怖くなってきた。
A:……そうか?
B:つまり、あの、言いたくないけど、これってさ、もしかしてさ、世の中に存在しないおかしなんじゃね……?
A:んなわけねえだろ。
B:ツイッターも何も反応ないし。
A:まあふつー、意味わかんないツイートはスルーするわな。
   A:また食べる。
B:やめとけって。
A:なんかこう、やめられないとまらない的な。
B:え、何かヤバいもん入ってんじゃねえの!?
   A:、くしゃみを一発。
B:おい、大丈夫かよ。
A:ははは。ちょっと寒くなってきたかも。
B:マジかよ、マジかよ……。
A:また電話?
B:あ、もしもし?すみません、えーと、お菓子を買ったんですけど、その商品の名前とメーカーがわからなくて。詳しく調べたいなと思ったんですけど、そういう問い合わせってどこにしたら良いんですかね?あー、安全課ですね。はい。はい。ありがとうございましたー。
A:どこに電話してんの?
B:消費者庁
A:消費者庁!?
B:あ、もしもし、すみませんちょっとお菓子を買ったんですけど、その名前もメーカーもわかんなくて、これどういう商品か調べたいなと。はい。はい。あー、そうですか。あ、はい。なるほど。ありがとうございましたー。
   A:、大げさな咳をする。
A:どしたの急に。
B:こうなりゃ徹底的にやるぞ。
A:なに、こわ!
B:俺だってこわいよ!だからこそだよ!
A:次はどこに電話すんの!?
B:厚生労働省だよ。
A:ええ!?厚生労働省に電話する人初めてみた!
B:あ、もしもし、えーとですね、ある市販の食品についての詳細を調べてまして……。
   A:さらに大げさな咳と、関節の痛みを訴える。
B:あ、そうですか。わかりました。ありがとうございます。はい。はい。失礼しまーす。
A:なんだって?
B:向こうでも前例がないからすぐには対応できないって。
A:そうなんだー。
B:ていうか、大丈夫?すごい顔色悪いけど。
A:なんかちょっと頭痛くなってきたかも……。
B:マジで?ちょっともう1件だけ電話していい?
A:どこに?
B:警察。
A:警察!?いや別に事件とかじゃないからさー。
B:あ、もしもし。すみません、えーと何て言っていいかわかんないんですけど、ヤバいもん拾っちゃいまして。
A:おいおい、迷惑だからやめとけって。
B:あ、そうですか……。え、でも一応来てもらえます?はい。はい。(Aに)おい、住所。
   A:無言で机に置いてある郵便物を見せる。
B:えーと下北沢の……。
   A、吐き気も催し始める様子。
   B、電話を終える。
A:……どうだった?
B:詳細不明だから対応できないって。イタズラはやめてもらえますかとか言われちゃったよ。
A:そりゃそうだろ。
B:でも一応、来てもらうように言っといた。
A:そうなんだ……。
B:どうしよう。週刊誌とかウェブメディアにも連絡しといた方がいいかな。
A:……。
B:え、どうしたの。めっちゃ調子悪そうだけど。
A:なんか目眩も……ちょっとトイレ行ってくるわ……。
B:マジかよ、え、ちょっとこれホントにヤバいやつじゃない?
   A、ふらふらしながら席を立つ。
   移動中に倒れる。
B:おい!大丈夫かよ!
   A、返事もできない。
B:もしもし!えーと!友達が倒れて!えーと、何か変な外国製のお菓子を食べた後なんですけど!
   A、急に立ち上がる。そのまま勢いよく服を脱ぎ、派手な動きをする。
B:あれ、すみません、えーと、何か元気になりました!大丈夫です!ごめんなさい!(Aに)おい、いたずらとかやめろって!
A:私は……死神だ……。
B:……は?
A:私は……死神だ……。
B:……清水?
A:私は……死神だ……。
B:マジで言ってる?
A:人間界のお菓子になりすまし、人間の体内に入り、こいつを乗っ取ることに成功した……。
B:……え、え、え、ええ!?
A:こいつの命はもらった。貴様の命もいただく。
B:ちょちょちょちょ!ええー!!
A:さすがに急すぎるので、チャンスタイムをやろう。
B:は、は、はい……?
A:要らなければ良い。すぐさま貴様の命を……。
B:要ります要ります!チャンスタイム!お願いします!。
A:では今すぐ、貴様が一番大切にしている女に連絡しろ。
B:え、ええ!?
A:ただし、身内は不可とする。
B:ええ、マジですか!
A:これが貴様の人生で最後のメッセージだ。
B:ちょちょちょちょ、ええー!?
A:大切にしている女がいないならそれで良い。ではさっそく貴様の命を……。
B:いますいますいます!
A:貴様、先ほどこの1年は恋をしないと……。
B:すみません!実は内緒で付き合ってる彼女がいて。
A:なに……!?
B:えっと、清水の……その、大切な人だから言い出せなくて……。
A:なあにいぃいいい!?。
B:あ、もしもし。愛子さん?(Aの顔をうかがう)今ちょっとだけいい?
   A、驚愕の表情。
B:今までありがとう。本当に感謝してる。大好きです。愛してます!
A:死ねえええええ!(首を締める)
B:うわあ!
A:人の妹に手ぇ出すとはー!!クソヤロウがあああーーー!!!
B:ぎゃあああああ!!!!
A:……なーんてな、わかってたよ。
B:……は?
A:いや。あいつからぜんぶ聞いてるから。
B:……は??
A:いや、ドッキリでしたー。てってれー!
B:……はあ?
A:いや、だからこれ、ぜんぶドッキリ。
B:……はあ??
A:お前がこそこそ隠すからさあ、妹が遊ばれてんじゃないかって心配だったんだよね。
B:……はあ???
A:結構、カッコ良かったじゃん。
B:……ちょっと待てよ。見たろ、ぜんぶ。一連の流れ。
A:これ、知り合いにつくってもらったの。すごいよねー。
B:いやいや、そういうレベルじゃなくて。だってほら、いろんなとこ電話して聞いたじゃん、警察とか。
A:うん。みんなにそう対応するように言っておいたから。
B:はあ?
A:コンビニも、警察も、ツイッターのフォロワーにもぜーんぶ。
B:……ウソだろ
A:こういうドッキリするから、ご協力お願いしますねーって。お手柔らかにーって。
B:はあ……マジで!?
A:うん。
B:お前、ニートじゃん?
A:ニートだからこそじゃん?……てか関係ないだろ。
B:……。
A:……。
B:……。
A:……てか友達の妹に手を出すとか超こええええ!!
B:お前の方がこえええよおおおおおお!!!!!!

END

【ドラマ感想文】白い巨塔(2003年)-第一部(2/3)-

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[5話]
【内容】
社長の手術の成功を受けて、研究室に1億もの寄付がもらえる。
この実績で教授になれるかと思いきや、財前はこれを成果とするのではなく、120周年記念式典用の基金にしてはどうかと。
林田(製薬会社の営業)のがん治療に全力を尽くしたい里見。でも、財前としては無意味だと。ここまで入れ込むのは、里見の父に何かあったらしい。

式典絡みで鵜飼に肩入れする財前。教授選で鵜飼派の席を増やしたい。
つまり、東を敵にすると。でもその前に、選考会を勝ち進まないといかんと。
その選考委員に賄賂を送ることに。


東が呼んだ人が引き受ける。教授の選考会に大河内(里見の上司。アンチ財前)が参加。


【印象的なセリフ】

「あの……受け取っていただけるんでしょうか……」
「アホ。受け取らすんやないかい。ゴーンと。ゴーンと。へへへ」


[6話]
【内容】
選考会を経て、大河内が委員長に。

すい臓がんの患者をめぐって財前と里見が衝突。
患者の手術を請け負うことで大河内との接触を図ってポイントを稼ごうとするが、里見はそういう条件には応じられないと拒否。
彼女自身は自分の意思で退院する。鵜飼伝いに病院変わった方がいいと言われたから。

選考会がスタート。財前を推す声と、外部から招き入れる声が錯綜。

 


[7話]
【内容】
選考会は結論が出ず、全国公募に。
東の手術のサポートを申し出る財前。ポイント稼ぎか。
東になぜ自分を毛嫌いするか直談判。
でも大事なところで頭を下げることができず、決裂。

年代物に価値はないという財前、ラベルだけに価値はないとする東。
佐枝子と里見がいい感じになりそうなのを見て、東夫人が牽制する。

選考会で、財前と石川大のライバルともう一人のダークホースである徳島大学の人が残る。が「教授になりたくない」と言い出す財前。どういうこっちゃ。

【印象的なセリフ】

「どうやら、私と君の人間関係は終わったようだね」

 

【ショートコント】人形

http://farm3.static.flickr.com/2591/4115126223_9a7043ae16.jpg

 

   道を歩いている青年(A)。
   日本人形が落ちているのに気付く。
   小声で「うお、こわ……」とつぶやき、そのまま過ぎ去ろうとする。

声:ねえ……。
   男、立ち止まって周りを見渡す。近くに人はおらず、訝しげな表情。
声:ねえってば……。
   男、いよいよ深刻な顔。
声:聞こえてるんでしょ……。
男:え、これって、聞こえちゃヤバいやつ……。
声:ほら聞こえてるじゃん。無視しないでよ。
男:すみません……。
声:私、捨てられちゃったの。
男:……はあ。
声:……はあ、じゃないし。ひどくない?
男:ひどいですね。
声:拾ってよ。
男:……え?
声:拾って。
男:いや、それはちょっと……。
声:呪うよ?
男:ええ!?いくらなんでもそれは……。
声:じゃあ、拾ってよ。
男:ええ……すみません、これからデートなんで。
声:いいじゃん。連れてってよ。
男:ムリですよ!デートの待ち合わせでコレ持ってたら……怖いじゃないですか。
声:うわ、ひど!呪うよ?
男:あ、ちがうんです。
声:超傷ついた。
男:すみません……。
声:拾ってよ。
男:いや、だからそれは……。
声:あたし結構、タイプなんだよねー。きみみたいな顔。
男:あ、ありがとうございます。
声:拾ってよ。
男:ごめんなさい。
声:呪うよ?
男:だからそれやめてくださいって。
声:はあ、意味わかんないし。
男:……それ、こっちのセリフだと思う。
声:いいんだー、いいんだー、ほんとにいいんだー。
男:……何がですか。
声:住所、東京都世田谷区太子堂4-1-1。LINEのID、「c」「a」「r」「r」……
男:ちょっと!俺の個人情報なんで知ってるんですか!
声:私は何でも知ってるの。
男:答えになってない!
声:拾ってよ。
男:なぜそうなる!
声:呪うよ?
男:だから……!
声:初恋の相手、小学校で同じクラスだった水野香織ちゃん。告白したセリフ、“1億万円ぐらい好き!”
男:人の初恋をネタにするな!
声:中学3年の時にケガしてる人がカッコ良いと思って、3カ月間手首に包帯を巻いていた。
男:黒歴史!誰でもあるんだよそういうの!
声:好きな動物、鹿。
男:……(肩透かしをくらったように)!そうだよ鹿だよ!別に何も恥ずかしくないよ!
声:鼻毛の数、179本。
男:そんな多いの!?むしろ少ないの!?わかんないけどすっごい恥ずかしい!
声:マイナンバー、271951058121。
男:個人情報をさらすな!
声:円周率、3.14159265359
男:なぜ今、円周率!
声:ねー!いいじゃーん!拾ってよー!
男:ダメだって!俺、もう行きますから!
   目の前に彼女(日本人形そっくりの髪型)が登場。
男:うわ!びっくりした(かなり驚く)
女:……?
男:いや、ごめん。なんでもない。あはは
女:……
男:じゃあ、行こっか
女:……
男:どしたの?
   女、日本人形を指さす。
男:ああ、あれは……よくわかんない。でもいいの。さ、ほら。
女:……呪うよ?

[暗転]

END